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磁性流体シールの特性
磁性流体シールとは?
磁性流体シールは、液体や気体の漏れを防止するために用いられる部品であるシール(密封装置)の1つです。
磁性流体シールは、『磁性流体』という磁石に引き寄せられる不思議な液体が磁場中に保持される性質を利用して密封する、回転運動用のシールユニット製品です。
磁性流体の成分や性質について興味をもたれた方は磁性流体とは?に詳しい解説があります。
シール(密封装置)には、さまざまな種類・特徴のものがあります。
シールの分類に大まかな解説がありますので、あわせてごらんください。
磁性流体シールでは、回転軸(シャフト)とポールピースのすき間に、マグネットによって形成される磁束線に沿って磁性流体が保持されています。
磁力によってすき間に保持された磁性流体は、圧力差があっても流れ出すことなく、液状のOリングのような働きをします。
磁性流体が保持される強さは磁力によって決まり、磁力が強いほど磁性流体のリングの耐圧は大きくなります。
この磁性流体のリングを複数段形成することにより、大きな差圧にも耐えられる磁性流体シールができあがります。

磁性流体シールの基本構造
磁性流体シールは液体によりシールされており、固体同士の接触がないため、次のような特徴を持ちます。
- クリーン: シール材に液体を使用するため、回転軸とポールピースとの間に固体同士の接触がなく、摩擦によるパーティクルが発生しません。
- 高真空: 低蒸気圧の磁性流体を使用することにより10-6Pa以下の超高真空領域でも使用可能です。
- 長寿命: 回転軸とポールピースとの間に固体同士の接触がないため、摩擦による両部品の損耗がなく、省メンテナンスで長寿命なシールを実現することができます。
- その他:液体でシールするため、損失トルクが少なく、高速回転も可能です。
リガクはこの優れた特徴を持つ磁性流体シールの磁気回路を独自に開発し、より高機能な磁性流体シール「磁気シール」を開発いたしました。
クリーンな真空作りを実現する、リガク磁気シールユニットの秘密は、リガク独自の磁気回路をごらんください。
シールの分類
シールとは、液体や気体の漏れや外部からの異物の進入を防止するために用いられる部品の総称です。
シールを機能で大きく分類すると、運動用シールと固定用シールに分けられます。
運動用シールとは、回転や往復運動のような運動部分の密封に用いられるシールの総称で、パッキンとも呼ばれます。
一方、固定用シールとは、例えば配管フランジなどのように静止部分の密封に用いられるシールの総称で、ガスケットとも呼ばれます。
運動用シールにはさまざまな種類がありますが、真空中への回転導入に使用する代表的シールは、磁性流体シール、オイルシール(ウィルソンシール)、Oリングシール、ベローズシール、マグネットカップリングシールの5種類です。
それぞれのシールについて、原理・構造・特徴などの詳しい情報は代表的な運動用真空シールをごらんください。
磁性流体シール | オイルシール (ウィルソンシール) |
Oリングシール | ベローズシール | マグネット カップリングシール |
|
---|---|---|---|---|---|
使用可能な真空領域 | 超高真空 | 高真空 | 高真空 | 超高真空 | 超高真空 |
回転速度 | 高速回転 | 低速回転 | 低速回転 | 低速回転 | 低速回転 |
許容伝達トルク | 大 (回転軸強度に 依存) |
大 (回転軸強度に 依存) |
大 (回転軸強度に 依存) |
小 | 小 ロストモーション あり※ |
発塵 | 極小 | 多 | 多 | 少 | 少 |
寿命 | 長 | 短 | 短 | 短 | 短 |
※ロストモーションとは、回転および加減速時に発生する追従の遅れのことです。
代表的な運動用真空シール
Oリングシール
Oリングを溝部に装着して適度に圧縮することにより発生するゴムの反発力(接触圧力)でシールしています。
長所装着部分容積が小さいので、小さなスペースですみます。
簡単な構造のため比較的多くの真空機器に採用されています。
ゴムと回転軸の接触圧力によりシールを行なうため、回転抵抗が非常に大きくなります。また、摩耗が多いため短寿命です。

オイルシール(ウィルソンシール)
オイルシールはゴム製のリップ部、金属補強環、バネにより構成されています。スプリングによってリップの先端が回転軸に押し付けられることによってシールしています。
長所構造が簡単なので、比較的取り扱い易いです。
軸偏心量の大きい所や、高速域など比較的広範囲に使用できます。
グリースまたはオイルが充填されているため、油分が漏れて周囲を汚染する可能性があります。
ゴムと回転軸の接触圧力によりシールを行なうため、摩擦による発塵があり、あまり寿命は長くありません。

磁性流体シール
回転軸(シャフト)とポールピースのすき間に、マグネットによって形成される磁束線に沿って磁性流体が保持されています。磁力によってすき間に保持された磁性流体は、圧力差があっても流れ出すことなく、液状のOリングのような働きをしてシールしています。
長所液体によりシールされているため、固体同士の接触がありません。そのため摩擦がなく長寿命でパーティクルが発生しない、高速回転も可能という特徴があります。また、真空側軸受けを大気側に移し、片持ち構造とすることにより、さらにクリーンな環境を実現することができます。
短所回転運動のシールのみで、直動運動のシールは行えません。
また、液体をシールすることはできません。シール内部に液体が入ったり、磁性流体付近で液体が凝集(結露)するような条件では、シール寿命が短くなります。

ベローズシール
ベローズの伸縮性を利用し、大気側軸から真空側軸に回転動力を伝えています。
長所真空側と大気側とが溶接ベローズで遮断されており、ゴムを使用していないため高温でベーキングを行うことができます。超高真空装置にも用いられています。
短所ベローズとその溶接部が繰り返し伸縮およびねじり力を受けるので、疲労破壊による寿命が問題となります。また、真空側に必ず軸受が必要になります。

マグネットカップリング
大気側と真空側を薄い隔壁で覆い、隔壁を介して大気側に配置されたマグネットの磁力で真空側の軸を回転させる方式です。
長所真空側と大気側とが非磁性の隔壁で遮断されており、ゴムを使用していないため高温でベーキングを行うことができます。超高真空装置にも用いられています。
短所動力の伝達が磁気であるため、負荷が大きいと空回りします。 また、真空側には必ず軸受が必要になります。
